「引っ越し難民」と言う言葉が聞かれて久しくなりましたね。 引っ越し難民とは、引っ越し件数が多くなる春の新生活シーズン、つまり「3月〜4月」において、引っ越し業者の予約が取れなかったり、料金が高すぎたりすることで「引っ越ししたくてもできない」人たちのことを言います。 (詳しくは以下の記事を参考にしてください!)
このシーズンは「繁忙期」と呼ばれ、年間の引っ越し件数の多くがこの時期に集中します。 特に「3月20日から4月5日」は「最繁忙期」と呼ばれることもあり、極めて人気な時期となっています。
↑ 国土交通省の「引越繁忙期対策チラシ」より
この時期は進学や就職、さらには転勤などが集中する新生活シーズンのため、引っ越し需要が非常に高まります。 その結果、引越し業界の供給力が追いついておらず、そのため料金も例年高騰しています。
しかしながら、2019年以降の引っ越し繁忙期は異常なまでの高騰を見せています。 実を言うと、2019年、2020年は繁忙期の「シーズン割増」の引き上げが認可されており、その結果として異常なまでに高額な料金が飛び出すようになっているのです!!
今回はそんな2019年・2020年の状況を踏まえて引っ越し繁忙期の相場を確認し、繁忙期の引っ越しをどうすれば少しでもお得にできるのか解説していきましょう!!
目次
1. 2019年以降、繁忙期の引越し相場は恐ろしく高い…
それでは早速、2019年・2020年繁忙期の引越し費用がどの程度なのか、相場をお教えしましょう!
そうは言っても、引っ越しは条件が違え見積り金額が変わって当然です。 「引っ越し」というのは言わば「オーダーメイド」ですから、条件をはっきりしないことには非常にぼんやりとした答えしか出せません。
ですので、具体的な例を挙げて費用相場を見てみましょう。
この見積り金額の妥当性は実際の実例と照らし合わせて確認をとっています。
① 単身引越しの場合
1つ目の例は、以下のような単身引越しの例とします。
この条件で、2019・2020年の相場を踏まえて見積りしてみますと、ざっくり見積もってこんな感じになります。
距離 | 基本料金 | 通常期 | 繁忙期 | 最繁忙期 | 閑散期 |
---|---|---|---|---|---|
100km以内 | 3.5万 | 2.5万〜3.5万 | 3.5万〜7万 | 7万〜16万 | 2万〜3万 |
200km以内 | 4万 | 3万〜4万 | 4万〜8万 | 8万〜18万 | 2.5万〜3.5万 |
300km以内 | 5万 | 3.5万〜5万 | 5万〜10万 | 10万〜22.5万 | 3万〜4.5万 |
400km以内 | 5.5万 | 4.5万〜5.5万 | 5.5万〜11万 | 11万〜25万 | 3.5万〜4.5万 |
500km以内 | 6万 | 5万〜6万 | 6万〜12万 | 12万〜27万 | 4万〜5万 |
最繁忙期シーズンの値上がりが尋常じゃないですね… 今年の場合、最繁忙期にはなんと単身引越しでも10万円を超える見積りが飛び出すようになっています。
Twitterでもこのような声が見られています。
このような現状になっている理由などの詳しい解説は次章に回します。 とりあえず上の見積り表から分かるポイントをまとめておきましょう!
- 2019年以降、例年以上に繁忙期料金が跳ね上がっている
- 最繁忙期と閑散期・通常期を比べると、費用は2倍以上で、下手すると4倍以上になることもある
- 同じ繁忙期と言っても、最繁忙期を避ければ数万円安くなる場合もある
② 4人家族の引っ越しの場合
もう1つ例をあげてみましょう! 今度は4人家族の場合を見てみます。 単身であの料金でしたから、ちょっと見るのが恐ろしいですね…
見積もりの条件は以下のように設定します。
- 「4tトラック」1台で積み切れる荷物量 (4人家族としては一般的〜やや少なめ)
- 「梱包サービス」や「開梱サービス」は利用せず自分でやる
- 洗濯機設置などのオプションサービスは利用なし (※1)
- 上階料金はかからない (旧居も新居も1階〜3階)
- 200kmまでは当日便の3名作業 (※2)
- 200kmを超えたら宵積み・翌降ろしの4名作業 (※2)
(※2) 本来4tトラック分の荷物なら4名作業が一般的ですが、一台のトラックには3人しか乗れないため、当日で終わる200km以内の引っ越しは3名作業にして費用を抑え、業者側としても人員・トラックを他の引っ越しに回せるように設定しました。
※3 4人家族の引っ越しでは「フリー便」や「混載便」は使えない場合が多いので、単身の場合と違い外してあります。
さて、この場合の費用相場はどんな感じになるでしょうか!?
距離 | 基本料金 | 通常期 | 繁忙期 | 最繁忙期 | 閑散期 |
---|---|---|---|---|---|
100km以内 | 11.5万 | 9万〜11.5万 | 11.5万〜17万 | 17万〜40万 | 7万〜9万 |
200km以内 | 13.5万 | 11万〜13.5万 | 13.5万〜20万 | 20万〜60万 | 8万〜11万 |
300km以内 | 18万 | 14.5万〜18万 | 27万〜36万 | 45万〜80万 | 11万〜14.5万 |
400km以内 | 20万 | 16万〜20万 | 30万〜40万 | 50万〜90万 | 12万〜16万 |
500km以内 | 22万 | 17.5万〜22万 | 35万〜45万 | 55万〜100万 | 13万〜17.5万 |
100万円が登場しましたね笑。 それでも Twitterの声を見てみると、私の見積もりはこれでもまだ「優しい見積もり」なことがわかります。
今、某引っ越し業者に見積もり計算してもらったのだけど、192万円www
4人家族レベルの荷物量で、配送距離は関東から関西。
会社が引っ越し費用完全に代替してくれる企業を前提に、ふるいをかけてる現状地方に行く新卒の人、これ四月から働けねーわ、これ#引っ越し難民
— ずんだ餅 (@BI_BLIA_) March 8, 2019
それでは、表を元に繁忙期における家族の引っ越しのポイントをまとめてみましょう!
- 繁忙期に家族で引っ越そうとするとかなり高額な見積もりになる
- 特に、最繁忙期には現実的ではない見積りが飛び出すこともある
- また、長距離になるとその傾向が顕著で、基本的に数十万〜百万円以上になる
- 閑散期と最繁忙期を比較すると、下手すれば10倍近い料金になっていることもある
それでは、以上を踏まえて、なぜ2019年以降の繁忙期はここまで引っ越し費用が高騰しているのか解説していきましょう。
2. 2019年から「シーズン割増」の法定上限が引き上げられた
引越し業者は、「貨物自動車運送事業法」という法律や「約款 (やっかん) 」と呼ばれるルール、あるいは「全日本トラック協会」の指針などにより、見積り金額の定め方やキャンセル料、保証などのルールを定められており、それに従わなければなりません。
そのルールは引越し業界の現状に合わせて変更されることがあり、近年の引越し業界の状況を受けて繁忙期料金の上限が例年の「250%割増」から「350%割増」に改定されました。
- 繁忙期のシーズン割増を適用して良いのは「3/20〜4/5」のみ
- シーズン割増は最大で350%割増まで
しかしながら、実をいえば「このルールすら守られていない」のが現状なのです!!
① 本来は繁忙期料金が適用できるのは「3/20〜4/5」のみ
上で挙げたルールにある通り、ルール上は「繁忙期割増」をして良いのは「3/20〜4/5」と決められています。
したがって、ルールに従えば、例え3月に入っても3/20までは割増をすることができず、せいぜい割引なしの「定価」までしか見積り金額を引き上げてはいけないのです!
しかしながら、現実にはこのルールは破られています。 ほとんどの業者が3/10ごろからシーズン割増を初めており、「80〜200%くらいの割増をしている」のが現状です。
- 本来のルール上は繁忙期割増は「3月20日〜4月5日」のみしか適用できない
- でも、現実には多くの業者が3月に入ると繁忙期料金をつけ始めている
そのため、2019年以降、繁忙期料金の相場は引越し業界のルール通りに計算した「適正価格」 よりも高い水準で推移しています。 言ってしまえば、ルール違反な見積り金額が横行しているわけですが、管轄する国土交通省も全日本トラック協会もこの状況を黙認しています。
その背景には政府が進めている「働き方改革」の影響があります。 これにより、繁忙期における引越し業者の長時間労働に見直しが入り、残業時間があまり長くならないように受注する引越し件数をセーブするようになっています。
その結果、引越し業者によって非常に重要な「繁忙期の売上」が確保できなくなってしまうため、それを防ぐために単価を上げているのです!
また、単価を上げている理由はそれだけではなく、「繁忙期の引越し需要」に対して「引越し業界全体の供給力が不足」しているということも挙げられます。 「働き方改革」の影響に加えて2019年2月に大手引越し会社であった「ヤマトホームコンビニエンス」が営業停止処分となり、営業再開後も部分的な再開に留まっています。
その結果として、引越し業者側がお客さんの需要に応え切れておらず「お断り」しているような状況ですので、 「強気な見積りをしていてもお客さんが見つかる」状況なのです!
このような理由により「適正価格外」の異常な高騰が黙認されているのです。
② 法定上限は「350%割増」まで
350%割増って、つまり通常料金の4.5倍ですよ… 恐ろしいですね。
しかも、閑散期や通常期は通常料金よりも値引きして提供しているわけですから、繁忙期料金がいかに高いかがわかります。
そもそも法定がこんな具合なのに、しかも現実には法定以上の値上げをしている場合もあります。 それに該当してしまいやすいのが手間のかかる「長距離引っ越し」「家族の引っ越し」です。
正直なところ、この時期はお客さんならいくらでもいるので、会社としては「利益の効率が悪い引っ越しはやりたくない」のがホンネなのです!! それをお客さんに直接言うわけにもいかないので、その代わりに現実的ではない見積りを提示するわけですね。
これが近年問題視されている「引っ越し難民」が生まれる原因にもなっているのです。
- ルール上は「繁忙期料金」を適用できるのは3月20日〜4月5日のみ
- 法定の「繁忙期料金」は350%割増まで可能
- しかし現実には3/20以前も料金割増をつけているのが現状
3. 繁忙期の引っ越し費用を少しでも安く抑える方法
それでは、そんな状況の中、どのように対応するべきなのでしょうか?
- ベストなのは「引っ越し時期をずらす」
- 繁忙期前の1月〜2月上旬は「閑散期」なのでかなりお得
- 繁忙期後のGW明けもだいぶ安くなる
- 繁忙期中に引っ越す必要があるとしても、せめて最繁忙期は避ける
- できるだけ早めに予約をとる
- 引越し業者の都合に合わせる
- 出来るだけ荷物を減らしておく
- 単身なら単身パックの利用も検討する
- 必ず相見積りする
① 引っ越し時期をずらす
いちばん良い方法は「そもそも繁忙期に引っ越しをしない」ことです!
国土交通省も「分散引っ越し」の呼びかけをしている通り、可能であるのな「1月〜2月」や「GW明け」に時期をずらすのがベストな選択肢です。 これらの時期は引っ越し費用も比較的安い時期に当たりますので、繁忙期と比べたら2倍以上お得に引っ越せる場合もあります。
どうしても繁忙期中に引っ越す必要があるとしても、最繁忙期に当たる「3月20日〜4月5日」は避けて「4月10日以降」にすることでだいぶ費用はマシになります。 ただし、受注できるキャパが小さい零細引越し業者・中規模引越し業者では4/10になっても予約がいっぱいで安くできないこともあります。 この時期は意外と大手の方が安かったりしますので、覚えておくと良いでしょう!
② できるだけ早めに予約する
これは当然のことですが、この時期に引っ越すつもりなら業者探しは早めに動き出すのが得策です。 きほんてきに、1月中には予約しておくようにしましょう!
特に、家族の引っ越しは予約を取りにくいので、できるだけ早めに動き出すようにしましょう!
③ 引っ越し業者の都合に合わせる
この時期の引越し料金を安くする大きなポイントは「できるだけ引越し業者の都合に合わせる」ことです!!
「3/24でお願いします」というより、「3/15〜3/30まででできる限り安い日でお願いしたいです」という方が良いでしょう。 また、時間帯指定をしない「フリー便」にするのも費用を抑えるポイントですので、繁忙期中なら必ずフリー便を利用しましょう!
④ 荷物を減らしておく
見積りの料金計算をする上で言えば、荷物を少し減らしたところで計算結果はさほど変わらないのですが、それでもいろいろな観点から見て荷物は減らせるだけ減らしておいた方が良いでしょう。
見積り時の印象が良くなりますし、だいぶ減らすことができればトラックサイズをワンサイズ下げられるかもしれません。
そもそも、引っ越しは「断捨離」するのにちょうど良い機会ですので、気持ちよく新生活を始める意味でも不要なものは処分すると良いでしょう。
余談ですが以下の本は新生活前に読むのにちょうど良いと思いますので、気が向いたら読んでみてください!
⑤ 単身パックを利用する
日通が提供する「単身パック®︎」やそれと類似したヤマトのサービス「わたしの引越」など、俗にいう単身パックと呼ばれるサービスは「明瞭料金な定額制」なのでこの時期の引っ越しには非常に適しています!
「荷物が非常に少ない」「専用ボックスに入らないような大きな荷物がない」ことが利用できる条件にはなりますが、荷物が少ない単身引っ越し、特に中距離以上の場合に非常におすすめです。
「専用ボックス1つ」で荷物が収まるのなら最安値を狙える選択肢だと思います!
⑥ 相見積りをする
繁忙期に限らない、あまりにも基本的なことですが、引越し業者選びをするときは必ず「相見積り」をとるようにしましょう!
相見積もりを取ることで引っ越し費用は安くなります。 特に繁忙期ではその傾向が顕著で、業者間で予約状況に違いがありますので普段以上に差がつきやすいです。 普段なら3社程度の相見積もりでも十分ですが、このシーズンなら5社以上の相見積もりはとっておきたいところですね!
相見積もりを取る際は「一括見積りサイト」を利用するのが一般的です。 一括見積りサイトにはデメリットや注意点もありますが、それを理解して承知の上で使えば非常に大きなメリットがあるものです。 また、現在ではこれまでの一括見積りサイトのデメリットを克服した次世代型の一括見積りサイトも登場しています。 一通りの選択肢を一度検討して見て、自分にあったものを利用してみるとよいでしょう。
6. まとめ
それではこれで以上です。 今回のポイントをまとめて見ましょう!
- 最繁忙期は「3/20〜4/5」で、このシーズンは料金激高なので極力避けたい
- 最繁忙期は避け、可能なら「1月〜2月中旬まで」か「GW明け」に、あるいはせめて「4月10日以降」にする
- 時期をずらせないのなら「業者の都合に合わせること」と「相見積りを取ること」は徹底する
- 荷物が少ないのなら日通や大和「単身パック」も検討する
それでは、これにて以上です。 あなたの引っ越しがよりお得に、スムーズに終わり、気持ちの良い新生活を始められることを願っております!!
【あわせて読みたい】より良い引っ越しをするために…

「引っ越し」はライフスタイルの変化のときです。
どこへ行き、どこで時間を過ごすのか?
誰と過ごす時間が増え、家にいる時間をどう過ごすのか?
環境とともに、自然とライフスタイルが変わります。
そんな人生の中で大きな意味を持つ「引っ越し」というイベント。
少しでも「良い引っ越しだった」と思えるようにしたいものですよね。
でも、引っ越しは思っているより大変です。
新居選び、退去手続き、役所やライフラインの手続き、荷造り、引っ越し業者選び・・・
やることはたくさんあります。また、費用面も安くありません。
その中でも引っ越し費用はただ高いだけでなく、「相場がわかりにくい」ため注意が必要です。
時には相場が分かりにくいのをいいことに、適正料金よりも高い見積り金額を提示する業者もいます。
こちらが無知でいると「業者の言い値」でいいようにやられてしまうのです。
しかし、引っ越し費用は簡単な方法で大幅に安くすることができます。
「あること」をするかしないかで費用が半額になることもあるのです。
そこでまずは、そんな引っ越し費用や業者選びのことに詳しくなりましょう。
これから引っ越しをするあなたへ、まず読んで欲しいことをまとめましたので、まずはここからお読みいただけたらと思います。
コメントを残す