ここ数年、引っ越しシーズンになるとニュースなどで「引っ越し難民」という言葉を聞くようになりました。
引っ越し難民とは、「引越し業界の繁忙期にあたる3月〜4月上旬頃に引っ越したい、引っ越す必要があるのに、引越し業者に予約を断られたり、料金が高すぎたりの理由で引っ越しできなくなってしまった人たち」のことを言います。 2018年から問題がメディアで取り上げられるようになり、引っ越し難民というワードが生まれました。
- 引っ越し難民とは「予約が取れない」「料金が高すぎる」などの理由で引っ越したいのに引っ越しができなくなってしまった人たちのことである
- 引っ越し業界の最繁忙期である3月〜4月上旬に発生する
- 2018年よりメディアに取り上げられて顕在化
このような問題が近年起こっており、国土交通省や全国トラック協会なども「分散引っ越し」の呼びかけをしている現状です。
さて、このような「引っ越し難民」はなぜ生まれてしまうのでしょうか? また、今後もこのような状況は続くのでしょうか?
そして、一般の私たちにとって何より大事なのは、
- 「自分が引っ越し難民にならないためには?」
- 「もし引っ越し難民になってしまったらどうする?」
ということですね! この疑問にもしっかり答えていきましょう!
目次
1. なぜ引っ越し難民が発生するの? これまでの経緯と原因
そもそもですが、引っ越し難民はなぜ発生するのでしょうか? その原因は以下のように言われています。
- 引越し業界の慢性的な人員不足
- 年間通しての収支を「繁忙期での売上」に大きく依存している引越し業者の経営
- 「働き方改革」による労働時間 (残業時間) の見直し
① 引越し業界の慢性的な人員不足
実を言えば、繁忙期シーズンに料金が高騰してしまうせいで希望日に引っ越せない人は2018年以前にも存在していました。
そもそも引越し業界は繁忙期の人員確保が難しいという問題があります。 これは「引っ越し」というもの自体の需要が年間で大きく偏ってしまうことが大きな要因になっています。 国交省が出している下のグラフを見て分かる通り、3月〜4月の引っ越し需要は他の月の1.5倍〜2倍となっています
そのため、繁忙期に合わせて人員確保すれば通常期・閑散期には人手が余ってしまいます。 人件費もかかるためそうするわけにもいかず、繁忙期は派遣やバイトを増強し、協力運送業者の手を借りてなんとかしようと試みていますが、それでも需要に供給が追いついていないのが現状です。
しかも近年宅配業の賃金が見直され、トラックドライバーが引っ越し業界よりも宅配業界に流れがちなこともあるようです。 このような原因もあり、繁忙期は「需要過多」な状況となっているのです。
② 年間売上の収支を繁忙期に頼っている
また、そんな需要過多な状況であるため、当然ですが繁忙期シーズンは引越し料金が非常に高騰します。 高騰してもお客さんが見つかる状況ですし、そもそも「繁忙期は高くなるのが常識」となっていますので、このシーズンの引越し料金は非常に高くなります。
ちょっと業界の裏話をしますと2020年の3/20〜4/5は「通常料金の350%の割増料金」まで認可されています。 安い時期には「通常価格の40%引き」くらいの料金が提示されることもありますので、つまりは、安い時期の7.5倍もの料金が提示されることもあるわけです!!
しかもこれは法律・法令や「全日本トラック協会」の指針通達をきちんと守っている例で、場合によってはそれを無視してそれ以上の料金を提示している業者もあります。さきほど言った通り「それでもお客さんがいる」からです。
そうは言っても、別の角度から見れば現実的な問題として、この時期に売上を上げておかないと引越し業者は年間売上を確保できないという側面もあります。
上の引っ越し件数のグラフの通り、最繁忙期シーズン以外は引っ越し件数自体が減少してしまいますので、これらの時期は「割引き合戦」で顧客確保を図るほかないのが引っ越し業界の現状です。
近年はお客さん側も「引越し費用は値引きしてもらってなんぼ」という認識が広まっており、価格競争に拍車をかけています。 そのため、利益が確保できるシーズンで売上確保するほかないのが現実なのです。
③ 「働き方改革」による残業時間の削減の影響
もともとそのような現状でしたが、2018年以降さらに繁忙期の引越し料金高騰に拍車をかけたのが政府による「働き方改革」です!
引っ越し業界は繁忙期になると朝早くからかなり遅い時間帯まで稼働しているのが通例でしたが、そのような「長時間労働」が「働き方改革」で問題視されました。 その結果として大手引越し業者を中心に労働基準監督署の査察が入り、残業に関する是正勧告を受けました。
したがって、大手引越し業者が軒並み引っ越し件数の受注制限をして残業時間の削減をせざる負えなくなっています。
それによって余計に単価は上げざる負えなくなって引越し費用は高騰しますし、需要過多の状況にも拍車がかかっています。
以上のような原因で2018年以降、引っ越し難民問題が激化してメディアにも取り上げられるようになったのです!!
④ 2019年は「ヤマトの営業停止」と「レオパレス問題」が追い打ちに
特に2019年の引っ越し難民問題はひどいものがありました。 それには慢性的な問題に加えて突発的な理由が2つありました。
- 大手引越し業者「ヤマトホームコンビニエンス」の営業停止処分
- 「レオパレス問題」による引っ越し需要の急増
(1) ヤマトの営業停止
大手引越し業者として多数の引っ越しをこなしていたヤマトホールディングスの引越し部門「ヤマトホームコンビニエンス」が2019年1月に国土交通省から行政処分を受け、営業停止になりました。 法人向け引越しで不適切な請求を行っていたのが原因です。
(参考 : 物流業界ニュースサイト「LNEWS」ヤマトホームコンビニエンス/事業停止、車両停止など123支店を行政処分)
これによりただでさえ供給が追いついていない状況に拍車がかかりました。
(2) レオパレス問題
さらなる追い打ちはテレビニュースでも連日報道された「レオパレス問題」です。 2019年2月に発覚したこの問題は、賃貸不動産大手「レオパレス21」の多くの物件で構造上の不備などの法令違反が多数見つかったというものです。 住民の安全な暮らしを脅かす大きな問題となりました。
(参考 : NHK解説委員会「「レオパレス21の施工問題と再発防止」(時論公論)」)
これにより、レオパレスに住んでいた住民約8,000人あまりが「3月末までに退去するように」と通達を受け、ただでさえ需要過多なシーズンだと言うのに引越し需要がさらに急増したのです。
2. これからも引っ越し難民問題は続く?
このように2018年から顕在化した「引っ越し難民問題」は2019年激化しましたが、2020年以降はどのようになっていく見通しなのでしょうか?
- 「ヤマトの(部分的な)営業再開」と「レオパレス問題による需要増の沈静化」により、2019年よりはマシな状況
- しかし依然として根本原因は解決しておらず、2020年以降も「引っ越し難民問題」は続く
- したがって、現状はまだ利用者自身がどのように対応するか考える必要性がある
たしかに2019年に新たに発生した問題については沈静化しましたが、未だに根本原因はまったく解決しておりません。 また、ヤマトの営業再開もまだ部分的なもので、以前の状態には程遠い現状です。
したがって、残念ながらまだまだ引越し難民問題は続くものと考えられています。そのため現状は引っ越しを検討する利用者自身がどのように対応するか考える必要があります。
3. 引越し難民問題の影響を受けやすい人
そうは言っても、繁忙期シーズンにも引っ越しできている人は引っ越ししているわけですので、誰しもが大きく影響を受けるわけではありません。 それでは、どんな人が引越し難民問題の影響を受けやすいのでしょうか?
- 長距離引っ越しをする人
- 家族での引っ越しをする人
理由は簡単で、「長距離引っ越し」や「家族の引っ越し」は時間がかかるため業者側として効率が悪く、人員やトラックの確保が難しいからです。
長距離で引っ越しすれば、荷降ろしが終わった後の「トラックの荷台が空のまま走る」無駄な時間が長くなってしまいます。 その間に近距離の単身引越しを1件終えてしまうことだってできたかも知れないと思えば、需要がたくさんあって選び放題な中でわざわざ長距離引っ越しを請け負いたくはないのがホンネというものです。
また、家族での引っ越しも荷物が多いため作業員をたくさん導入しなくてはならず、効率が悪いです。
したがってどうなるかと言うと、「予約がいっぱい」と断られるか「(効率を落とすのを納得できるくらい)非常に高額な見積り金額を提示される」かの2択になるのです。
このように、「長距離引っ越し」や「家族での引っ越し」を検討されている方はこのシーズンでの引っ越しは現在非常に難しい状況です。 対応策を考えていく必要があるでしょう。
4. 「引越し難民」にならないためには?
それでは、自分が引越し難民になるのを防ぐためにはどうすればよいでしょうか?
- 可能な限りは引っ越し時期をずらして最繁忙期を避ける
- どうしても最繁忙期に引っ越すなら
- とにかく早めに行動する
- できる限り業者の都合に合わせる
- できる限り荷物を減らす
- 相見積りをしっかり行う
① 可能なら時期をずらす
引っ越し難民にならないためにいちばん良い方法は「最繁忙期に引っ越しをしない」ことです! これができるのならそれに越したことはありません。
引っ越しの最繁忙期と言われるのは「3月20日〜4月5日」頃です。 この期間は業者側も「最大350%増しの割増」が認められており、非常に高額な費用となりますので、できる限りはこの時期を外した方がよいのは間違いありません。
また、この時期を外しても「3月中〜4月上旬」は十分に繁忙期と呼ばれる時期なので、できればこれ自体から外したいです。
学校などが始まる4月10日以降であれば、受け入れ可能件数が多い大手を中心に料金が少しずつ落ち着いてきます。 特に、GWが過ぎてしまえば通常料金にまで戻りますので、遅くできる方はそのようにするとよいでしょう。
前にずらすのであれば、1月〜2月はもともとは閑散期と呼ばれていた時期ですので余裕があり、料金もかなり安く抑えられます。 ただし、最近は少しずつ繁忙期を避けて前倒しする人も増えていますので注意しましょう。
② どうしても繁忙期に引っ越したいなら
都合によってはどうしても繁忙期真っ只中に引っ越さなければならない人もいると思います。 そういう場合はどうしたらよいのでしょうか?
(1) まずは早めの行動を!
これは当たり前の話ですが、とにかく早い動き出しが肝心です。 最近は3月に引っ越しを考えている人は1月中から動き出して業者探しをはじめている人も多くなっています。
1月から予約をしておけば、単身とかなら結構簡単に見つかりますので、早めの行動を心掛けましょう。
(2) できる限り業者に都合を合わせる
そもそも高い時期に引っ越そうとしているわけですので、少しでも安くするために大事なのは「業者さんの都合に合わせる」ことです。
たとえば、引っ越し希望日を厳密に「3月△日」とは指定せず、「3月10日〜3月30日までで安くできる日」とか「3月中の土日で1番安い日」にするとかが考えられます。
また、時間指定をせずに日程のみの予約にする「フリー便」にすると予約を取りやすくなるだけでなく、トラック運賃が40%も安くなりますので、絶対にその方がオススメです。
もし長距離なら「混載便」にすることも費用を抑えるのに有効で、こちらもトラック運賃が40%ほど変わります。 積み込み日から受け取り日までに期間が空いてはしまいますが、ここはできる限り業者都合に合わせることで少しでも安く予約を取ることを優先しましょう。
(3) できる限り荷物を減らす
引越し料金を決める直接的な要素は「荷物量」ではなく「トラックサイズ」なので、少しくらい荷物が減ったからと言って大きく料金が変わるわけではないですが、それでも少しでも荷物を減らしておくことで予約を受けてもらいやすくなります。
もし「簡単な引っ越しだ!」と営業担当に思ってもらえれば、値引き額が大きくなる可能性は十分あります。 それに、もし荷物を処分した結果トラックサイズが変わるのであれば、引越し費用は一気に数万円安くなります。
引越しは最近流行の「断捨離」をするいい機会でもありますので、できる限り荷物を減らす努力をしてみましょう。
(4) 相見積りをしっかり行う
引越しなどの「定価が定まっておらず」「高額で」「相場がわかりにくい」ものの鉄則として「相見積り」をしっかりとることが重要です。 相見積りとは、複数の業者に見積りを取ってもらって比較することです。
特にこの時期は業者ごとに予約状況が異なり、安く提供できる日に差がある場合があります。 また、この時期は大手引越し業者を中心に、中堅以上の規模を持った引越し業者の方がキャパが大きい分やすくなりやすい傾向があります。
以下のような業者を中心に最低3社以上に見積もりを依頼するとよいでしょう。
- 大手引越5社
- サカイ引越センター
- 日本通運
- ヤマトホームコンビニエンス
- アート引越センター
- アリさんマークの引越社
- 規模の大きい中堅引越し業者
- アーク引越センター
- ハート引越センター
- ハトのマークの引越センター
- 強みのある引越し業者
- 単身に強い「アップル引越センター」
- 中〜長距離に強い「人力引越社」
- 中〜長距離に強い「引越のプロロ」
ちなみに、相見積りをするなら複数の業者に見積もりを一度にかけられる「一括見積りサイト」の利用が便利です。 詳しくは以下の記事をご覧ください。
5. 引越し難民になってしまったらどうする!?
基本的に前章でみたように早めに動き出すなどの工夫をして、引越し難民になってしまうことを防ぐのが何よりなんですが、もし自分が引越し難民になってしまったときはどうすればよいでしょうか?
- まずは可能な限りは時期をずらす
- どうしても最繁忙期に引っ越すなら
- 宅配サービスなどを利用する
- 自家用車やレンタカーでの「セルフ引越し」を試みる
まず極力時期を後にずらして4月中旬以降やGW明けに引っ越すのがいちばんです。 もし可能ならそのようにしましょう。
もしどうしても繁忙期中に引っ越す必要がある場合の選択肢を考えてみましょう。
① 宅配サービスなどの利用
これは単身者などの荷物が少ない場合じゃないと厳しいですが、荷物を最低限に絞り、ダンボールに詰めて「宅配便で送る」という方法が考えられます。
この場合、日本郵政の「ゆうパック」かヤマト運輸の「ヤマト便」が費用的にオススメです!
もちろん、その他に佐川急便などの選択肢もありますね。
以下の記事を参考にしてみてください!
なお「少量だけでいいから家具・家電も送りたい!」という場合は「家財便」という選択肢もあります。 ヤマトや佐川などで提供されていますので、検討してみるとよいでしょう。
② セルフ引越し
本来はあまりオススメしないのですが、最悪の場合は自家用車やレンタカーによる「セルフ引越し」も考えられます。 なぜあまりおすすめしないのかと言うと、以下のような理由です。
- 中距離以上だと、レンタカー代がかなりかかる。長距離なら下手すると引越し業者に頼んだ方が安いくらい
- 家屋の養生をするのが難しく、傷をつけてしまったら復旧に高額な費用がかかる
- 非常に大変。手間がかかりすぎる
- 手伝ってもらった方に謝礼を渡したり、食事代を出したり思っている以上にお金がかかる
- もしトラックをレンタルする場合、慣れないトラックの運転はリスクが大きい
このような理由のため、もしセルフ引越しをするにしても「ハイエースや軽トラで往復しないで済むくらいの単身引越し」程度じゃないと厳しいだろうな、というのが私の個人的な意見です。
しかしもし他に選択肢がないならやるしかありませんので、そのときは覚悟して臨み、怪我や事故には十分に気をつけて作業しましょう!!
6. 引っ越し難民に対する取り組み
最後に、現在少しずつですが引越し難民問題の根本解決に向けての取り組みがはじまっているので、それを少し紹介しましょう!
◎ 株式会社リベロが主導する「引越し難民ゼロプロジェクト」
引越し一括見積りサイトの一つ『引越しラクっとNAVI』を運営している株式会社リベロという会社が「引越し難民ゼロプロジェクト」というプロジェクトを2020年1月に発足しました。
(参考 : 株式会社リベロの「引越し難民ゼロプロジェクト発足」に関するプレスリリース)
株式会社リベロは中小の引越し業者同士が連携して効率的な業務を推進するためのプラットフォーム『HAKOPLA』という事業を2019年7月よりはじめており、そのように業者間の連携を推し進めることで引越し難民を無くしていこうと試みています。
また、国土交通省も「引越し難民」については問題視しており、今後なんらかの動きを見せることも考えられます。 今後の展開に期待したいですね!!
ちなみに、リベロさんが提供する一括見積りサービス『引越しラクっとNAVI』もこれまでの一括見積りサイトとは一線を画する次世代型の面白いサービスとなっていますので、一度ぜひご覧ください。
7. まとめ
それでは以上です。 最後に今回の要点をまとめておきましょう。
- 引越し難民とは、繁忙期に予約が断られてしまったり、高額な見積り金額のため引っ越ししたくてもできない人のことを言う
- 2018年以降、問題が顕在化・激化しており、今後もしばらくは続くものと思われる
- できるだけ繁忙期を避ける「分散引越し」をするのが個人ができるいちばんの解決策
- どうしても繁忙期に引っ越す必要があるのなら、1月中くらいから業者探しを始めるのが得策
- その場合、「極力業者の都合に合わせる努力」をすると良い条件で予約を取りやすい
- 特に「長距離引っ越し」「家族での引っ越し」をする人は影響を受けやすいので注意
それでは以上です。
引越し難民になってしまうのを防ぎ、より良い新生活を送れることを願っております!
【あわせて読みたい】より良い引っ越しをするために…

「引っ越し」はライフスタイルの変化のときです。
どこへ行き、どこで時間を過ごすのか?
誰と過ごす時間が増え、家にいる時間をどう過ごすのか?
環境とともに、自然とライフスタイルが変わります。
そんな人生の中で大きな意味を持つ「引っ越し」というイベント。
少しでも「良い引っ越しだった」と思えるようにしたいものですよね。
でも、引っ越しは思っているより大変です。
新居選び、退去手続き、役所やライフラインの手続き、荷造り、引っ越し業者選び・・・
やることはたくさんあります。また、費用面も安くありません。
その中でも引っ越し費用はただ高いだけでなく、「相場がわかりにくい」ため注意が必要です。
時には相場が分かりにくいのをいいことに、適正料金よりも高い見積り金額を提示する業者もいます。
こちらが無知でいると「業者の言い値」でいいようにやられてしまうのです。
しかし、引っ越し費用は簡単な方法で大幅に安くすることができます。
「あること」をするかしないかで費用が半額になることもあるのです。
そこでまずは、そんな引っ越し費用や業者選びのことに詳しくなりましょう。
これから引っ越しをするあなたへ、まず読んで欲しいことをまとめましたので、まずはここからお読みいただけたらと思います。
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